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2021.03.29 コラム
脳梗塞の前兆と初期症状の対応|一過性脳虚血発作(TIA)とは?

この記事の監修者
加藤 隆三
理学療法士
脳梗塞とは、脳の血管が完全に詰まり、その先の脳細胞に血液が運ばれなくなった結果、その部分が死滅してしまう状態です。死滅した脳細胞は再生あるいは回復させることはできないため、その部分が担っていた運動や感覚などに障害が出てしまいます。最近では前兆症状(一過性脳虚血発作)が出現した時点や、脳梗塞発作を起こして3時間以内であれば、脳へのダメージを最小限に抑えるための治療が可能になっています。また、最近では前兆症状である一過性脳虚血発作が起こった際は、救急疾患として対処する必要があると言われています。欧州では救急疾患として対応したことで80%の方が脳梗塞になるのを防げたという報告もあります。今までの考えとは変わってきているので、いち早く気づき迅速で適切な対処を取れるかどうかが、脳梗塞になるかどうかの分かれ目になる可能性があるということです。今回は以下2点について、ご紹介いたします。
①脳梗塞の前兆症状である一過性脳虚血発作とは?
②その対処(受診、検査、治療)はどうすれば良いか?
一過性脳虚血発作は今までの認識では「予後の良い軽い脳梗塞」と思われていましたが、そうではなく「早く対応しないと重度な脳梗塞に繋がる可能性のある救急疾患なため、すぐに受診しないといけない病気」という認識に変えて頂きたいと思います。また、万が一、自分あるいは家族・知人に前兆症状が出てしまった場合に備えて、迅速で正しい対処(受診・検査・治療)ができるようにして頂きたいと思います。脳梗塞は「ある日、突然起こるもの」というイメージがあるかもしれませんが、前触れというのがあります。その前触れである前兆症状を「一過性脳虚血発作(transient ischemic attack;以下TIA)」と言います。
脳梗塞の前兆症状である一過性脳虚血発作、TIAとは?
『脳梗塞の前兆症状と言われ、脳に梗塞はないのに、血液の流れ(血流)が一時的に悪くなり(一時的に血管が詰まる、あるいは血液の量が減り)、脳梗塞と似た症状(片麻痺・感覚・言語障害など、以下に詳細に記載する)が短時間(数分から1時間、最長で24時間)で現れて消える状態』のことを言います。血流が戻れば細胞に血液が送られるので症状が消えます。そのため、画像診断では梗塞は見られません。「一過性」とは、「症状が一時的ですぐに消えること」を意味します。症状が自然と消えるため、今までは軽視されていましたが、最近の専門家の間では、「TIAは発症直後ほど脳梗塞を続発する危険が高いので、救急疾患として対処する必要がある」とされています。脳梗塞になるかは症状の持続時間は関係ないとも言われていますので、「症状が消えたから大丈夫」ではなく正しい知識と対処(検査・治療)が必要な病気になります。欧州での方では、TIA後,救急体制で早期に診断・治療を行えば,80%ほど脳梗塞を防げたという報告もあり、TIAの早期診断・治療の重要性が叫ばれています。
(注意)症状が消えたからといって受診せずに放置しておくと、(2日以内に)脳梗塞につながることが多いので、放置せず当日すぐに救急科・脳神経外科・神経内科などを受診してください。
前兆症状として、どのような症状がでる?
※以下①~⑥のような症状に気付いたら、すぐに救急科・脳神経外科・神経内科などに受診してください。また、ここには記載されていないような色々な症状がありますので、「あれ、おかしいな」と思ったら、すぐに受診あるいは医師にご相談してください。
運動障害
片側の手足や顔が麻痺(力が入らない、自分の思ったように動かないなど)してうまく動かせなくなるなどの状態(片麻痺)。
例)手に力が入らず箸や物を落としてしまう。足に力が入らなくなる。腕が挙がらない。
食事中に口から食べ物や水分をこぼしてしまう。
顔の半分がゆがむ、口の半分(口角)が垂れ下がる(顔面麻痺)。
感覚障害
片側の手足や顔がしびれる、あるいは鈍く感じるなどの状態。
例)ビリビリするようなしびれがある、触れている感じが鈍い、体が傾いているのに気づかない
言語障害
言葉が出なくなる(失語症)、または言葉は出るのに呂律が回らなくなる、口が回りにくくなる(構音障害)状態。
例)言いたいことが言えない、思ったことと違うことを言ってしまう、言葉が理解できない、言葉がはっきり言えない
視力障害
片方の視力が急激に低下する一過性黑内障などの状態。物が二重に見える(複視)
例:一時的に片目が見えなくなる。真っ暗になることもあれば白っぽくなることもある。
視野障害
視界の半分が見えなくなる(半盲)などの状態
例:片側にある物が見えにくい。絵の半分が見えない。
その他
・めまい ・脱力 ・片頭痛 ・意識障害 ・便失禁や尿失禁 など
※「意識が・・・」の画像:使用イラスト(c)フリーメディカルイラスト図鑑
(注意)
①運動障害(片麻痺)、③言語障害(失語症)、④一過性黒内障、⑤半盲はTIA特有の症状と言われますが、他の②感覚障害(痺れ)、⑥その他(めまい、片頭痛、意識障害など)は、他の病気でも起こるため鑑別が必要になります。まずは受診をしてください。
2種類のTIA「内頸動脈系」・「椎骨脳底動脈系」
TIAの症状は「内頸動脈系」と「椎骨脳底動脈系」の2つに分けられます。
それぞれの症状について、具体的に説明いたします。
「内頸動脈系」のTIAの症状
内頸動脈は前頭葉・側頭葉・頭頂葉の3領域を支配しているため、その部位が担う機能が障害されます。代表的な症状は以下の5つです(先述した①~⑤の症状)。
①運動障害(片麻痺) …前頭葉の障害
②感覚障害 …頭頂葉の障害
③言語障害の中の失語症 …側頭葉の障害
④視力障害(一過性黒内障)
⑤視野障害(半盲) ※椎骨脳底動脈系でも起こる可能性はある。
「椎骨脳底動脈系」のTIAの症状
椎骨動脈は後頭葉・脳幹・小脳の3領域を支配しているため、その部位が担う機能が障害されます。代表的な症状は以下の2つです。
①言語障害(構音障害)
②めまい
症状の出る時間は? 短ければ安心? 起こった直後が最も危険!
梗塞があるわけではなく、一時的に脳への血流が悪くなるだけなので、短くて数分から長くて最長で24時間以内に消えます。こちらは詰まった症状がもろく、自然に溶けるためです。一瞬のことですので、症状が出た本人も「疲れているかもしれない」「気のせいかもしれない」と見逃してしまいがちです。もし、この段階で異変に気付き、すぎに治療をすれば、脳梗塞を防ぐことが可能です。TIAは脳梗塞の前兆であり、一時的にでも欠陥が詰まった箇所は、すぐにまた同じ箇所が詰まってもおかしくありません。脳梗塞の危険が高いのが、TIA発症から24~48時間です。すなわち、TIAを見逃してしまうと、翌日に脳梗塞が発症する危険もあります。また、最近では時間が「短ければ安心」ではなく、専門家の間では「TIAは発症直後ほど脳梗塞を続発する危険が高いので、救急疾患として対処する必要がある」と危険視されています。したがって、症状の持続時間に関係なく脳梗塞に繋がる可能性が高く、特に起こった直後が最も危険なため、すぐに受診が必要と認識して頂きたいです。
脳梗塞につながる可能性は?
TIAになると、約5%から20%の人に脳梗塞が発症すると言われており、最近の研究により,従来考えられていた以上に短期間(TIA後90日、3か月以内に15~20%,うち約半数が2日、48時間以内に脳梗塞を発症)に脳梗塞を発症するリスクが高いことが明らかになってきています。欧州では救急疾患として治療したことで80%の方が脳梗塞になるのを防げたという報告もあります。したがって、「ちょっと調子がおかしいな」という感じで放っておくと危険ですので、必ず受診をしてください。
TIAが起こる原因は?
発症原因は①動脈硬化による血栓が原因の場合、②心房細動による血栓が原因の場合と大きく2つに分かれ、それぞれ治療法が異なります。血栓とは「血の塊」のことです。血栓が脳の血管に詰まり、血液の流れが止まってしまった場合、TIAが起こります。
動脈硬化による血栓が原因の場合
動脈硬化により頸部や脳内の動脈にできた血栓(特に頸動脈にできるものが有名です)が、脳の血管を詰まらせることが原因となります。動脈硬化とは、血管がもろく、硬くなっていく現象をいいます。TIAの原因としてこれがとても多く、TIA患者全体のうち3分の2程度を占めます。
心房細動による血栓が原因の場合
心房細動が原因となり、心臓にできた血栓が脳に流れていき、脳血管を詰まらせることが原因で起こります。心房細動とは、心拍が乱れること(不整脈)により、心臓の左心房が痙攣したように収縮し、脈が不規則になる現象をいいます。TIAの原因の残りほぼ3分の1がこれです。これを「心原性脳塞栓症」と呼びます。
症状が出た際に、対処方法(受診・検査・治療)はどうすれば良いか?
症状が出たらどうすれば良いか?
何度も言いますが、症状が出た直後が最も危険なため、まずは、脳の病気ですので、すぐに救急科・脳神経外科・神経内科に相談・受診してください。できれば脳卒中診療医がおられる病院を受診すると良いです。
どのような検査でTIAと診断される?
場所によってはTIAや軽症脳梗塞に特化した専門クリニックもありますので、インターネットで調べてご相談・受診して頂くのも良いと思います。
診断は、症状、血圧測定、血液検査、心電図、心臓エコー、頭部MRI、MRA、頸動脈エコーなどを行います。
原因によって治療は変わる?
原因は上述した①血栓が原因、②血圧が原因の場合があるので、治療法が変わります。基本的には血液をサラサラにする薬(抗血小板薬、抗凝固薬などと呼ばれるもの)を使用した内科的治療となりますが、場合によっては手術などの外科的な治療も行われます。以下に原因別での治療法をご紹介します。
動脈硬化による血栓が原因の場合の治療法
脳の動脈や頸動脈に起こるTIA(全体の3分の2を占める)
(内科的治療)
・抗血小板薬…動脈硬化が原因でおこったTIAの場合に使用。
バイアスピリン、プラビックス、プレタールなどがあります。
(外科的治療)
薬でも効果がなく、かつ、頸の血管の動脈硬化が原因の場合は外科的治療を行うことがあります。
・頸動脈内膜剥離術:頸動脈にある動脈硬化をくり抜いて取り除き、血液の流れを良くする方法
・頸動脈ステント留置術:頸動脈にステントという管を置いて血管の中を広くし、血液の流れを良くする方法
心房細動による血栓が原因の場合
心房細動が原因で起こるTIA(全体の3分の1を占める)
(内科的治療)
・抗凝固薬…心房細動や心臓弁膜症など、主に心臓疾患が原因の場合に使用。
ワーファリン、プラザキサ、イグザレルトなどの
脳梗塞の前兆と予防について
一過性脳虚血発作や脳梗塞を予防するには、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病、動脈硬化を防ぐことが大切となります。栄養バランスの取れた食事と習慣的な運動(20分以上の負荷が軽い運動でよいです)を心がけ、たばこは止めてください。また、BOTを利用されている方も2.3日前に調子がおかしくなって脳梗塞になったしまったという方が多いです。もし、症状が現れた当日に病院に受診をされていれば脳梗塞を防げた可能性があると思うと、とても歯がゆく思います。本人だけではなく、家族・知人が「脳梗塞には前兆があって、当日に受診をしないといけないもの。前兆から2日以内に脳梗塞になる危険性がある。」ことを知っていることが、自分あるいは大切な人を助けられる手段となることを知って頂きたいと思います。
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この記事の監修者
加藤 隆三
理学療法士

2012年に常葉学園静岡リハビリテーション専門学校を卒業し、理学療法士免許を取得。資格取得後は整形外科やスポーツ現場、介護サービスにて様々な分野のリハビリテーションに携わる。介護現場ではお客様の生きがいや生活の質を高めることをコンセプトとした生活リハビリの業務に従事する。2018年から脳梗塞リハビリBOT静岡の所長に着任、脳梗塞の後遺症に悩まれている方のリハビリやご家族の支援も行う。また地域リハビリテーションにも力を入れており、介護予防教室を50回以上開催し、自立支援型ケア会議に参加している。その他、福祉用具専門相談員に対する講演や大学教授との共同研究等を行っている。地域の皆さんがいつまでも生きがいを持って生活できるよう、最善のリハビリを提供することを心がけている。